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ワイシャツが縮む理由とは

ワイシャツ縮み
同じクリーニング店に出してるのに、襟やカフスが縮んで返ってくるワイシャツと縮まないワイシャツがあったりしませんか?ワイシャツには縮みやすいものと縮み難いものがあります。
根本的に、衣服というのは洗濯をすると生地が若干縮むケースが多いですが、このページでは、ワイシャツの衿やカフスにある縮み問題について解説します。

ワイシャツが縮む理由とは

ワイシャツにはデザイン上の特性として主に3箇所、重要な副資材が仕込まれています。「衿」と「カフス」と「前立て」の3箇所に『芯地』というのが仕込まれています。
そして、ワイシャツで縮みが起きる箇所はほとんどが「衿」か「カフス」か「前立て」です。つまり、芯地というのは衣服のシルエットを維持する為などに用いられる副資材ですが、縮みを引き起こす原因にもなる副資材なのです。しかし、この「芯地」という副資材にはワイシャツを縮ませる「芯地」と縮まない「芯地」に分けられます。更に、クリーニングでの仕上げ方法によって縮み易い方法と縮み難い方法に分けられます。

参考:「芯地」について

ワイシャツの芯地を知る

ワイシャツに使われる芯地は表地に接着樹脂を使って接着してあるものが多く、一般的に「接着芯地」またの名を「トップヒューズ芯」と言われ、機械化による合理化が進むアパレルの生産現場では広く普及しています。
また、はじめから接着剤を使わず縫製のみでつける芯地もあり、これを「フラシ芯」と言いますが、高度な技術が要求されることから価格の高い高級ワイシャツなどに使用されるケースが多いです。
そして、縮むワイシャツのほとんどは「トップヒューズ芯」が使用されています。

トップヒューズ芯(接着芯)

トップヒューズ芯トップヒューズ芯

トップヒューズ芯は接着樹脂で生地と芯地を貼り付けている為、張りが出る代わりに着心地が悪くなりがちです。その為、例えば高級生地を使っていても着心地に悪影響を及ぼすことも考えられます。
芯地の入ってる箇所の裏地をつまむと接着されてる芯地と表地も一緒に引っ張られることで、トップヒューズ芯であることが確認出来ます。

フラシ芯

フラシ芯フラシ芯生地もしなやかで着心地も良いのが特徴です。メーカーによっては、表地と芯地は接着し裏地は接着しないものもあります。
芯地の入っている箇所の裏地をつまむと、裏地のみをつまむことが出来、芯地や表地が引っ張られることがないことで、フラシ芯であることが確認出来ます。

接着芯地が収縮するメカニズム

熱に弱い芯地
トップヒューズ芯に使用されている接着樹脂は熱可塑性樹脂(熱で柔らかくなる樹脂)で、一般的に高密度のポリエチレン樹脂が使用されており、この樹脂の軟化点は130度ぐらいと言われています。熱可塑性樹脂は、軟化温度以上で柔らかくなり、冷えるとまた固まりますが、この時樹脂がわずかに収縮します。

濡れがけプレスの繰り返し
そして、クリーニング業界におけるワイシャツ仕上げでは日々大量に持ち込まれるワイシャツの「作業効率」を良くする為、比較的料金が高くなる「アイロン手仕上げ」以外に、衿とカフス部分に対してアイロンを使わずにプレスする「三つ山プレス機」という機械を用いられるケースが多いです。そのプレス機の仕組みは、洗浄後濡れた状態のワイシャツの衿とカフスを3つの山状になっている台に各々セット固定し、上から熱と圧力でプレスします。
つまりプレス機処理を行う際に、温度によって樹脂が柔らかくなりその後干すなどにより冷却されると、樹脂がまとまろうとして元の状態より縮んだ状態で固まります。ちなみに収縮は一気に起きるのではなく、濡れた状態で行うプレスの繰り返しによって徐々に収縮が進み、最終的に数センチの収縮が生じることになります。

芯地の収縮メカニズム

プレス機を使用しても「収縮しないお店」と「収縮するお店」

プレス機が芯地に与える影響は業界内でも知られており、しっかり対策を講じているお店もあれば対策をしていないお店もあるなど、お店によってバラつきがあります。機械の型式やメンテナンス頻度や作業するスタッフの技量や意識などが影響する為、店選びのバロメーターにもなり得ます。

ワイシャツの収縮問題が抱えるジレンマ

このようにワイシャツの縮みは、芯地と機械による影響が原因と考えられていますが、共通して言えるのが「低価格」「低料金」の実現と引き換えに生まれた問題でもあるのです。

多くのワイシャツが家庭洗濯されることを前提に作られている

クリーニング代の節約志向を背景に、家庭洗濯での取り扱いを容易にしてアイロンがけの必要性をなくす為に生まれたのが「形態安定加工」や「イージケア加工」のシャツです。
そして現在市場に多く出回っているワイシャツのタイプがこうした加工を施している製品で、要するに家庭洗濯されることを前提に作られていることが考えられます。
よって、家庭洗濯の現場で専用プレス機は使用されないことから、芯地は比較的安価なトップヒューズ芯が使用されるケースが多いのです。言い替えれば家庭洗濯での容易なケアと商品の低価格化を優先することから、芯地をトップヒューズ芯にしているとも考えられます。

家庭洗濯の手間と時間の節約の為クリーニングに出す実態?

ところが実際には、家庭洗濯では洗いっぱなしだとシワがなくてもピシっとした張り感は復元し難い点、張り感を出したい方は結局は家庭用アイロンを駆使して仕上げなければならない点など、クリーニング代金は浮いても、手間とそれにかける時間という代償を払わなければなりません。そのような事から、結局はクリーニングに出す方も多いのが実態なのではないでしょうか?

機械仕上げと手仕上げの違い

ワイシャツとプレス機

ワイシャツの仕上げ方法はざっくりと「手仕上げ」「機械仕上げ」の2種類に大別されます。
そして「手仕上げ」は当然「機械仕上げ」に比べ手間と時間がかかる為料金は比較的高いですが、高品質な仕上がりが実現可能です。
というのも、実は「手仕上げ」であればトップヒューズ芯のワイシャツでもよほど技術が低くくない限り縮むことはありません。その理由は、処理する動作がプレス機と異なる上に、芯地まで伝わる熱量が異なるからです。

アイロンとプレス機の仕上げ方の動作の違いとして、アイロンによる「手仕上げ」であれば形を崩さない程度に引っ張りながら生地に対して滑らせるように仕上げます。一方、プレス機だと機械にシャツを固定して生地に対して上から押し付けるように仕上げます。

つまり、「手仕上げ」であれば生地をしっかり手で引っ張ることで張りを持たせ、その状態で生地に対してアイロンをかけることでシワをとり、またアイロンと生地が接する時間がプレス機と比較すると短いことから芯地まで熱が到達しない為、収縮が起きない仕上がりを実現出来るのです。更に、ワイシャツの形状も各商品によって異なることから、手仕上げであれば実は一番効率的に品質の良い仕上がりが可能です。

一方プレス機は固定してプレスする作業である為、作業を行うスタッフが適切にセット出来ていなければシワが寄り、更にプレス機の熱により芯地が軟化し、その後収縮した状態で仕上がってしまいます。

クリーニングでワイシャツを縮ませない方法

以上のような事から、クリーニングでワイシャツが縮む問題は、次のいずれかを心掛ければ防ぐことが出来ます。

  • フラシ芯のワイシャツを購入する。
  • トップヒューズ芯のワイシャツは手仕上げ処理を依頼する。
  • トップヒューズ芯のワイシャツをプレス機処理で頼まざるをえない場合は、収縮について対策を講じているか?店員に確認する。

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